Nature ハイライト
細胞:ミトコンドリア遺伝子の置換
Nature 493, 7434
ミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異はさまざまなヒト疾患を引き起こす。受精卵のミトコンドリアはすべて卵母細胞に由来するため、mtDNAの変異も母親から受け継がれる。S Mitalipovたちは以前、マカクザルの卵母細胞で、紡錘体–染色体複合体の移植によってmtDNAの置換が原理的に可能であることを証明した。今回彼らは、この技術をヒトの卵母細胞に使った研究を行い、その結果とともに、mtDNAを置換した卵母細胞から生まれた3歳齢のマカクザルの健康状態について報告している。この研究から、mtDNA疾患に対する置換療法が現実のものになる可能性が示唆される。一方D Egliたちは、2人のドナー由来のヒト未受精卵母細胞の間で核ゲノム移植を行うという、また別の手法を用いている。核ゲノム移植により生じた卵母細胞は、胚盤胞期まで発生することができ、そこから正常核型を有する胚性幹細胞株を樹立できた。この手法は、移植操作で誘発される核型異常を引き起こさずにmtDNA変異の遺伝を防止できる可能性を示している。
2013年1月31日号の Nature ハイライト
物性:凝縮物質における新しい「hastatic」秩序
細胞:ミトコンドリア遺伝子の置換
構造生物学:スプライソソームの作用機構の解明
宇宙:惑星の行く末を探る
材料:生体模倣高分子ネットワーク
環境:後退する熱帯の泥炭地帯
遺伝:ヒアリでは社会性染色体が女王の数を支配する
細胞:Rag GTPアーゼはmTORC1のための栄養センサー
細胞:リンゴ酸酵素とp53の相互作用
構造生物学:V1-ATPアーゼの回転機構