Nature ハイライト
分子生物学:マラリア原虫の多様な見せかけ
Nature 499, 7457
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)は赤血球に感染すると、それぞれ抗原性の異なる60個のvar遺伝子のうちまず1個だけを発現し、感染が進むにつれて別の1個へと発現を切り替えるというやり方で、免疫系による監視を回避する。L Millerたちは、抑制されているvar遺伝子の転写開始部位と遺伝子本体に、ヒストンH3にリシン36トリメチル化(H3K36me3)という修飾が見られることを明らかにした。熱帯熱マラリア原虫の変異型抗原抑制に関わるSET遺伝子(PfSETvs)をノックアウトすると、60個のvar遺伝子全て(それぞれが異なった型のPfEMP1膜タンパク質をコードしている)が同時に転写される。従って、PfSETvsがvar遺伝子の発現抑制に重要な役割を果たしていることが分かった。また、今回作製されたPfSETvsノックアウト熱帯熱マラリア原虫はPfEMP1を全種類発現しているため、マラリアを防ぐ多様な抗体が幅広く生じると予想され、抗マラリアワクチンとなる可能性がある。
2013年7月11日号の Nature ハイライト
細胞生物学:足場タンパク質の役割は支えることだけではない
生化学:RNA結合タンパク質の標的
医学:結核菌が生き続ける仕組みを解明
宇宙:見えない惑星はたぶんそこにはない
光学:鏡を使わない光閉じ込め
気候:気候制御のための制限対象を広げる
遺伝:円石藻エミリアニア属のゲノムから明らかになった高い多様性
分子生物学:マラリア原虫の多様な見せかけ
再生医学:爪が指の再生を制御する
細胞生物学:脂質スイッチによるエンドサイトーシスの制御