Nature ハイライト
発生:プラナリアの再生能力を制御する
Nature 500, 7460
プラナリアは小川や池でよく見られる扁形動物であり、組織再生能力があることで有名だが、限られた再生能力しか持たないプラナリアがいることも分かっている。今回、3つの研究グループが、再生能力の異なるプラナリアについて研究を行い、多細胞生物の胚発生と成体の恒常性維持に重要なWnt/β-カテニン分子シグナル伝達経路が、再生機構の中核であることを報告している。梅園良彦(理化学研究所ほか)たちは、ERKとβ-カテニンシグナル伝達が、再生に必要とされる前後軸に沿った形態形成勾配の基盤であることを見いだした。また彼らは、体の後方部分の断片から頭部を再生することができないコガタウズムシ(Phagocata kawakatsui)というプラナリア種で、β-カテニンを阻害することで、頭部再生を回復できることを示した。J SikesとP Newmarkは、失われた組織を再生する能力が限られたプラナリア種のProcotyla fluviatilisで、再生不能な組織ではWntシグナル伝達の調節が異常になっていることを示している。これらの領域でWntシグナル伝達を抑制すると、再生能力が復帰して再生芽ができ、新しい頭部も形成された。J Rinkたちは、再生能力の不完全な別のプラナリア種Dendrocoelum lacteumで、Wntシグナル伝達経路の成分をノックダウンすると、失われた組織を再生する能力が生じることを示した。
2013年8月1日号の Nature ハイライト
医学:遅発性アルツハイマー病の発症
宇宙:球状星団の年代と金属量の関係
応用物理学:細胞用のナノ温度計
材料科学:伸縮性を持つナノ粒子導体
海洋学:赤道太平洋における季節サイクル
発生:プラナリアの再生能力を制御する
細胞:エピジェネティックな記憶と多能性
生物物理:トリガー因子がタンパク質の誤った折りたたみを防ぐ仕組み
構造生物学:意外な塩基対形成がリボソームをだます