Nature ハイライト
Cover Story:細胞競合戦線:マウス胚性幹細胞の間の生死をかけた競合
Nature 500, 7460
細胞競合は恒常性維持機構の1つであり、ショウジョウバエ(Drosophila)で最初に見つかった。細胞競合では、生存可能ではあるが最適ではない細胞が後生動物の組織から除かれる。その生物学的役割は不明であったが、今回、M Torresたちはこの現象が哺乳類組織で働いていることを初めて明らかにし、その機能について考察している。この実験では、in vivoでの遺伝学的手法を用い、マウスのエピブラストでMycタンパク質をモザイク状に発現させた。エピブラストという胚性組織は、胚全体を作り出す多能性幹細胞を含んでいる。そして、近くにある細胞間で、Myc遺伝子量が生得的に不均衡であることによって細胞競合が進み、Mycレベルが相対的に低い細胞が、アポトーシスにより除去されることが明らかにされた。これらの知見は、細胞競合がエピブラストの幹細胞プールの最適化に働いていること示唆している。表紙は、細胞競合のレベルが上がると(図では左から右へと上がっていく)、胚の細胞集団が変化する様子を蛍光により画像化したもの。
2013年8月1日号の Nature ハイライト
医学:遅発性アルツハイマー病の発症
宇宙:球状星団の年代と金属量の関係
応用物理学:細胞用のナノ温度計
材料科学:伸縮性を持つナノ粒子導体
海洋学:赤道太平洋における季節サイクル
発生:プラナリアの再生能力を制御する
細胞:エピジェネティックな記憶と多能性
生物物理:トリガー因子がタンパク質の誤った折りたたみを防ぐ仕組み
構造生物学:意外な塩基対形成がリボソームをだます