Nature ハイライト
進化遺伝学:ネアンデルタール人の遺伝子は今
Nature 507, 7492
現代人のゲノムには、ネアンデルタール人の痕跡が含まれている。しかし、ネアンデルタール人に由来するDNAはヒトゲノム全体に均一に分布しているのだろうか、それとも場所によって集中しているといった不均一な分布をしているのだろうか。S Sankararamanたちは、ケラチンフィラメント(髪などの成分)に影響する遺伝子群を多く含むヒトゲノム領域内に、ネアンデルタール人由来のDNAが比較的多く存在することを明らかにしている。これは、現生人類がアフリカ以外のより寒冷な環境に適応する際にこうしたDNAが役立ったことを示唆している。しかしマイナス面もあり、ネアンデルタール人由来の対立遺伝子の多くが疾患リスクと関連していた。ヒトゲノムの他の領域には、ネアンデルタール人由来の対立遺伝子があまり含まれておらず、進化の過程で積極的に排除されたことを示唆している。これらの「失われた」遺伝子のうちのいくつかは精巣で発現し、X染色体上にあるため、ネアンデルタール人由来のDNAが現生人類の遺伝的背景に組み込まれた際にヒトの生殖能力を低下させたと考えられる。
2014年3月20日号の Nature ハイライト
がんゲノミクス:膀胱がんの治療標的を探し出す
発生生物学:骨の成長と血管新生は連動している
創薬:明らかになった死細胞処分機構
宇宙:アンドロメダ座IIに見つかった矮小銀河の合体
磁気圏物理学:地球の放射線帯内の「縞模様」
フォトニクス:フォトニクス技術を搭載したレーダー
環境化学:新生代の炭素収支を釣り合わせる
進化:メラノソームの形態の変化
進化遺伝学:ネアンデルタール人の遺伝子は今
免疫:インターロイキン35による免疫の負の調節