Nature ハイライト
Cover Story:脂質との結託:結合した脂質が膜タンパク質の機能を調節する仕組み
Nature 510, 7503
近年発表された膜タンパク質の高分解能構造の多くには、タンパク質に緊密に結合した脂質が存在するという注目すべき特徴があり、これらの脂質が膜複合体の構造にどのように影響するのかが疑問となっている。C Robinsonたちは、脂質と結合したタンパク質の折りたたまれたコンホメーションの高分解能スペクトルを得ることのできる、新しいイオン移動度質量分析(IM-MS)法を開発した。この方法を使って、MscL(大コンダクタンス機械刺激受容チャネル)、アクアポリンZおよびアンモニアチャネルの安定性を変化させる脂質が突き止められた。次に、これらの脂質の1つであるホスファチジルグリセロールが結合したアンモニアチャネルのX線結晶構造が決定され、チャネルの1つの特定のループ中のコンホメーション変化によってホスファチジルグリセロール結合部位が生じる仕組みが明らかにされた。今回の研究から、個々の脂質の結合が膜複合体の安定性を変化させる可能性があるという、重要な結論が得られた。表紙は、イオン移動度測定用セルから浮かび上がる、IM-MSが捉えた無傷状態の膜タンパク質複合体の構造。示されているのはアポ状態、脂質が1分子、あるいは2分子結合した状態のアンモニアチャネルである。(Letter p.172)
2014年6月5日号の Nature ハイライト
生体材料:注文に合わせて多成分タンパク質を設計する
進化:他とはちょっと違う有櫛動物
細胞生物学:マイクロRNAと呼吸器疾患
生化学:ヒトGLUT1グルコース輸送体の構造
宇宙:活動銀河核ジェットを駆動する強力な磁場
化学:新しいC–H結合の活性化法
気候科学:南極氷床の減少史
栄養:大気CO2濃度が上昇すると作物の栄養素が減少する
細胞生物学:リン酸化ユビキチンはパーキンの活性化因子である