Nature ハイライト
がん:mTORCが腫瘍の成長を持続させる仕組み
Nature 517, 7535
mTORC1複合体はあらゆる真核細胞に見られるプロテインキナーゼ複合体で、タンパク質の翻訳を促進することが分かっていることから、腫瘍の形成に関係するとされてきた。mTORC1の下流の主要なエフェクター経路は、翻訳開始を促進する4EBP1だと考えられている。今回、W Fallerたちは、マウス腸内の正常な恒常性にはmTORC1の活性は必要ないが、APC腫瘍抑制遺伝子の変異が引き金となって起こる腸腫瘍形成には、mTORC1活性が絶対に必要であることを明らかにした。著者たちは、伸長因子eEF2を介したS6キナーゼ下流の翻訳伸長の亢進が、APC欠失細胞の増殖には必要だが正常細胞では必要ないことを突き止めた。つまり、翻訳の開始ではなく伸長が、in vivoでのがん細胞増殖の制限要因になっていると考えられる。これらの知見によって、mTORC1シグナル伝達を標的にすれば、大腸がんにかかるリスクが高い患者の発がん抑制に役立つ可能性があることが分かった。
2015年1月22日号の Nature ハイライト
有機化学:安定な金(III)系触媒
創薬:二重に作用する強力な抗生物質テイクソバクチン
細胞生物学:エンドサイトーシスと細胞のシグナル伝達
細胞生物学:Meikinタンパク質は染色体分配を調節する
フォトニクス:高性能ペロブスカイト太陽電池
気候科学:20世紀の海水準を再考する
古生物学:魚竜の祖先に当たる水陸両生爬虫類か?
がん:mTORCが腫瘍の成長を持続させる仕組み
構造生物学:未成熟HIV-1混成集団中で見られるキャプシド構造