Nature ハイライト
分子生物学:代替性のDNA修復にはPolθが関わっている
Nature 518, 7538
非相同末端結合(NHEJ)による誤りがちな(error-prone)DNA修復経路は、誤りが起こらない(error-free)相同組換え経路が損なわれている際にその代替として使われ、また免疫系などの場合にも選択される。切断端が数塩基の相同性、つまりマイクロホモロジーを介して対合した後、NHEJにはDNA合成が必要となるが、これに関わるポリメラーゼがどれかは不明であった。今回、A Sfeirたち、およびA D'Andreaたちの2つの研究グループが、「誤りがちな」ポリメラーゼPolθをコードする哺乳類のPOLQ遺伝子がこの過程に関わっていることを明らかにしている。Sfeirたちは、テロメアの脱保護に際して、Polθはテロメアでの代替的な末端結合や、非テロメア配列での染色体転座を防ぐのに必要であることを示した。D'Andreaたちは、Polθのがん細胞での役割に注目し、相同組換えの起きない遺伝的状況ではPolθがなくなると合成致死が起こることを示している。この結果は治療法として使える可能性がある。
2015年2月12日号の Nature ハイライト
超伝導:高Tc超伝導体研究を振り返る
遺伝学:体脂肪分布を心血管代謝形質と結び付ける
遺伝学:肥満の遺伝的要因
神経科学:グリッド細胞の配置は環境を反映する
天文学:星形成複合体のクローズアップ
気候科学:最終退氷期における海洋のCO2の減少
神経科学:低温ショックタンパク質による神経保護
がん:PTEN欠失による抗がん耐性
発生生物学:組織の折りたたみに関わるアポトーシス
分子生物学:代替性のDNA修復にはPolθが関わっている