Nature ハイライト
生化学:天然変性タンパク質が担う調節機能
Nature 519, 7541
天然変性タンパク質(intrinsically disordered protein;IDP)は生理的条件下で決まった三次元構造をとることができないタンパク質だが、転写や翻訳といった細胞過程では重要な役割を果たしている。このようなタンパク質は、小さな領域が「結合に際して折りたたまれる」ことによって標的と相互作用することが多い。eIF4Eに結合する翻訳開始調節因子の4E-BP2の場合には、54番目から60番目までのアミノ酸からなるYXXXXLΦモチーフがこのような領域に当たる。J Forman-Kayたちは、完全長4E-BP2のアミノ酸残基T37とT46がリン酸化されると、T19–R62領域の無秩序な構造が秩序立った構造へと変化し、これによってリン酸化部位とは離れた位置にある54-YXXXXLΦ-60モチーフがβストランドの中に埋もれることを明らかにした。IDPがリン酸化に応じて折りたたまれ、結合部位が隠されるという仕組みは、シグナル伝達を調節するためのこれまで知られていなかった、そしておそらくは広く使われている方式であり、がんや自閉症スペクトラム障害の治療に応用できるかもしれない。
2015年3月5日号の Nature ハイライト
神経科学:摂食に対するカンナビノイドの複雑な作用
神経科学:動く前の脳活動
医学:炎症の有益な作用
量子物理学:量子エラー訂正法に大きな進展
材料科学:生体系を模倣した液体ゲーティング機構
有機化学:アリル炭素–水素結合の直接アリール化
免疫学:ワクチン様の作用を持つHIV-1侵入阻害剤
炎症:食品に使われている乳化剤の有害な作用
生化学:天然変性タンパク質が担う調節機能
分子生物学:IRESはオールマイティ