Nature ハイライト
がん:機械圧によって促進される腫瘍増殖
Nature 523, 7558
発がん性シグナル伝達経路は多数見つかっているものの、機械刺激が腫瘍発生に関わる仕組みについてはほとんど分かっていない。今回E Fargeたちは、マウスモデルで機械圧とβカテニン経路の活性化の間に関連があることを実証した。βカテニン経路は大腸がんのドライバーであることが知られている。著者たちは巧妙な方法を用い、マウス大腸組織内に送達できる超磁気リポソームを作製した。この超磁気リポソームは、マウス大腸組織内でこの超磁気リポソームを制御しながら刺激してやると、腫瘍の発生早期に見られる機械圧に似た圧が生じる。この操作のみで、腫瘍周囲の非腫瘍上皮組織で発がん性βカテニン経路が活性化されることが分かった。この状況は、腫瘍に隣接する健康な組織で有糸分裂増殖圧によって引き起こされる機械ストレスを模倣していると考えられる。
2015年7月2日号の Nature ハイライト
構造生物学:重要なスプライソソーム複合体の構造
分子生物学:DNA損傷とスプライシング調節の連繋
惑星科学:ロゼッタ探査機が見つけたピット
量子ドット:量子ドットの新しい応用
気候科学:北大西洋の過去1000年間の気候
進化学:再分析で明らかになったハルキゲニアの頭部
神経科学:シナプス形成の時間と場所
システム生物学:細胞はみな個々に独立している
がん:機械圧によって促進される腫瘍増殖
がん:MYCによるスプライシング装置の制御
構造生物学:解糖系の重要な酵素の構造