Nature ハイライト
構造生物学:多剤耐性の構造基盤
Nature 524, 7563
病原性細菌の間で多剤耐性が広がるのは、主として「持続生残菌」の存在によっている。生残菌は表現型変異体で、休眠状態のままでいるために、活発に増殖中の細胞だけに効果がある抗生物質に対して感受性を示さない。今回M Schumacherたちは、大腸菌(Escherichia coli)では、野生型HipA(タンパク合成を阻害して細胞を休眠状態に送り込むセリンプロテインキナーゼ)が持続生残菌形成に関わっていること、またこのような生残菌の出現頻度を高めるhipA7変異体が尿路感染症患者に存在することを明らかにした。さらに、プロモーターDNAとHipA–HipB複合体からなる転写自己抑制複合体の構造が決定され、これらの構造から、持続生残菌を多数発生させる変異は、HipA–HipA間の結合を妨げてHipAを高次複合体から切り離し、多剤耐性が生じるきっかけを作ることが示された。
2015年8月6日号の Nature ハイライト
がん:小細胞肺がんの遺伝学的原因
分子生物学:RNAに対するエキソソームの柔軟なアプローチ
構造生物学:多剤耐性の構造基盤
統計物理学:複雑ネットワークにおける影響力の大きいノードを見つける
磁性材料:銅とマンガンのデザイナー磁性
地球化学:海洋堆積物中に閉じ込められる北極の炭素
神経科学:ノルアドレナリン回路の構造
エボラウイルス:エボラウイルス系統の進化
環境微生物学:意外にもエネルギー源だったシアン酸塩
細胞生物学:膜分裂の機構を詳細に調べる
がん:ヌクレオチド再利用の特異性
分子生物学:Ribo-Tが新しい合成経路に道を開く