Nature ハイライト
システム生物学:酸素存在下での発酵は正常な現象である
Nature 528, 7580
大腸菌(Escherichia coli)で実験プロテオミクスの手法を使ってモデリングを行うことにより、呼吸を行うのに必要なタンパク質の量(生産されるATP 1個当たりで考える)が、発酵を行うのに必要なタンパク質量の2倍にもなることが明らかにされた。急激に増殖中の細胞で、酸素が存在するにもかかわらず、エネルギー生産の方法として発酵が採用される現象は、オーバーフロー代謝(がん細胞の場合にはワールブルク効果)として知られているが、今回の結果はこれが細菌の最適な増殖の必然的な成り行きであることを明確に示している。プロテオミクス資源配分の単純なモデルによって、オーバーフロー代謝系で観察される挙動の全てが説明でき、条件の変化に対する応答も正確に予測できた。この研究により、オーバーフロー代謝が単なる無駄な浪費などではなく、当然の増殖様式であることが実証された。ここで使われた実験方法は、生物工学やがんの研究に直接適用することができる。
2015年12月3日号の Nature ハイライト
量子物理学:エンタングルメントと真剣に取り組む
がん:がん細胞株の体系的比較
生態学:海洋生態系の温度バイアス
がん:腫瘍を治療薬から守る細管ネットワーク
システム生物学:酸素存在下での発酵は正常な現象である
核物理学:アルファ–アルファ散乱を計算する方法
気候変動生態学:干ばつに襲われた高木を死に追いやる水輸送の機能低下
神経科学:発達障害治療に新たな光
代謝疾患:脂肪中の制御性T細胞のインスリン抵抗性における有害な役割
遺伝学:状況に応じる転写因子