Nature ハイライト
がん:再発性腫瘍の治療
Nature 529, 7586
小児の髄芽腫に対する標的治療の開発研究は、必然的に、未治療の患者のサンプルや動物モデルで行うことになるが、腫瘍が再発した際に新たな薬剤を試す場合、患者の中には以前に外科的切除や化学療法、放射線治療を受けたことのある人も含まれている。再発した腫瘍が当初の診断時の腫瘍と生物学的、遺伝学的に類似しているかどうかは不明である。今回M Taylorたちは、再発性髄芽腫の「ヒト化」マウスモデルを開発してその有効性を確認した上で、原発性腫瘍と再発性腫瘍を直接、遺伝学的に比較解析した。その結果、再発性腫瘍はクローン選択による大きな遺伝学的変化を経ていることが明らかになった。従って、原発性腫瘍で特定された治療標的候補の多くが、再発性腫瘍にも存在している可能性は低い。この情報は、再発した髄芽腫に対する今後の治療戦略を改善する手だてを示唆している。
2016年1月21日号の Nature ハイライト
神経科学:網膜神経節細胞には多数の種類がある
がん:再発性腫瘍の治療
生物工学:タンパク質翻訳を改善する
素粒子物理学:さらに精度の上がった反水素の電荷中性性
電池技術:超酸化リチウムを利用した電池
生態学:草原の生産力と多様性
発生生物学:生殖細胞におけるNanogの役割
細胞生物学:エンドソームからの搬出の際に起こるホスホイノシチドの転換反応
がん:BET阻害剤への耐性が生じる経路を探る