Nature ハイライト
細胞生物学:エンドソームからの搬出の際に起こるホスホイノシチドの転換反応
Nature 529, 7586
方向性を持ったメンブレントラフィックには、膜に含まれるリン脂質でその膜の特性を決定する役割を持つホスホイノシチド(PI)を、調節しながらPI代謝酵素によって転換していく必要がある。V Hauckeたちは今回、ホスファチジルイノシトール 3-リン酸(PI(3)P)の存在を特徴とするエンドソーム系から、ホスファチジルイノシトール 4-リン酸(PI(4)P)やホスファチジルイノシトール 4,5-ビスリン酸(PI(4,5)P2)が多く存在する分泌性区画や細胞膜へのメンブレントラフィックの際にPIの転換反応が起こる機構を調べた。細胞内の目的地に向かって輸送中のエンドソームの積み荷は、2つの酵素の働きによって輸送方向を変え、細胞表面へと戻せることが分かった。エンドソームの膜にあるPI(3)Pは、まずホスファターゼMTM1(この酵素の機能喪失は、ヒトのX連鎖中心核ミオパチーの原因となる)によって加水分解される。PI(3)Pの加水分解に伴ってホスファチジルイノシトール 4-キナーゼの作用でPI(4)Pが生成し、さらにエクソシスト係留複合体が動員されると、その後の細胞膜との融合が可能になるのである。
2016年1月21日号の Nature ハイライト
神経科学:網膜神経節細胞には多数の種類がある
がん:再発性腫瘍の治療
生物工学:タンパク質翻訳を改善する
素粒子物理学:さらに精度の上がった反水素の電荷中性性
電池技術:超酸化リチウムを利用した電池
生態学:草原の生産力と多様性
発生生物学:生殖細胞におけるNanogの役割
細胞生物学:エンドソームからの搬出の際に起こるホスホイノシチドの転換反応
がん:BET阻害剤への耐性が生じる経路を探る