Nature ハイライト 量子物理:熱が逃げると 2004年2月19日 Nature 427, 6976 量子物理の奇妙な法則が我々の日常世界とどのように関係しているかが段々正確にわかってきた。粒子が波のようにふるまい、Schrödingerの猫がすでに死んでいるのかどうかを誰も確実に知ることができない量子の世界は、普通原子のような小さい物体の領域である。しかし今回、M Arndtたちは70個の炭素原子からできたフットボール形をした大きい分子(C70)を量子的な挙動から古典的な挙動へと推移させ、この変化は分子が単に冷たくなるだけで起こることを観察した。M ArndtたちはC70分子を加熱し、分子が冷却する間にいくつか並んだ格子の中を通過させた。約700℃以下のとき分子は量子法則に従う。すなわち、分子は波のようにふるまうため、この格子のどこを分子が通過したか正確にいうことができない。しかし、1700℃以上に加熱すると、分子の熱損失から分子位置を知ることができるようになり、量子的な挙動から通常の古典的な挙動への変化が徐々に起こる。量子的な挙動はタンパク質などのもっと大きい分子でも観測されるだろうと予想されている。 2004年2月19日号の Nature ハイライト 生態:魚投棄量減少の影響は仲間の鳥へ 生態:「足かせ」の無い異国で暴走する外来雑草 地球:縁まで押しだされた不適合元素 医学:腫瘍を締め上げる方法 気候:古代における極域と赤道域の気候の関連 量子物理:熱が逃げると 神経:一個の脳細胞でひげは動く 目次へ戻る