Nature ハイライト
有機化学:化学品の原料としての二酸化炭素
Nature 531, 7593
温室効果ガスである二酸化炭素を化学品の原料として使えるかもしれないという考えは、魅力的だが通常は非現実的である。二酸化炭素は炭素求核剤と反応しやすいものの、炭素求核剤の合成には高いエネルギー入力が必要になるからである。しかし今回A Banerjeeたちは、植物の炭素固定を触媒する酵素であるルビスコ(RuBisCO)に着想を得て、アルカリ金属を含有する中温溶融塩を用いることによって、炭酸塩で促進される非常に酸性度の低いC–H結合の高効率カルボキシル化を実現できることを実証している。著者たちは、非可食バイオマスから容易に生成される2-フロ酸を、有用なバイオベース原料であるフラン-2,5-ジカルボン酸に変換することで、この化学過程の可能性を示している。
2016年3月10日号の Nature ハイライト
学習と記憶:自分の位置を知る
細胞生物学:監視機構の障害でタンパク質毒性が生じる
構造生物学:2孔型チャネルAtTPC1の性質を調べる
超伝導体:マヨラナモードがより現実的に
有機化学:化学品の原料としての二酸化炭素
気候変動生態学:気候に敏感な生態系が特定された
分子進化学:有性生殖は自然選択の効率を高める
再生:アホロートルの肢再生シグナル
植物科学:LURE1を追いかける多数の花粉管受容体
がん:肝疾患と肝臓がんを結び付ける