Nature ハイライト
分子進化学:有性生殖は自然選択の効率を高める
Nature 531, 7593
有性生殖はコストが掛かるにもかかわらず広く見られるが、その説明付けはかなり以前から進化生物学の課題となっている。理論やいくつかの実験研究から、有性生殖が広く見られる理由として、クローン干渉の低減や、有害変異のヒッチハイクを減らす可能性など、さまざまな機構が示唆されている。今回M Desaiたちは、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の実験進化をモデル系として用い、有性生殖集団と無性生殖集団の適応の動態を塩基配列レベルで比較した。すると、有性生殖が、有利な変異同士のクローン干渉を低減させることにより適応度を上昇させ、自然選択によって固定される変異の種類を変化させることが分かった。これらを総合した効果により、有性生殖は適応を加速させ、自然選択により有害な変異から有利な変異をより効果的に選別できるようにしている。
2016年3月10日号の Nature ハイライト
学習と記憶:自分の位置を知る
細胞生物学:監視機構の障害でタンパク質毒性が生じる
構造生物学:2孔型チャネルAtTPC1の性質を調べる
超伝導体:マヨラナモードがより現実的に
有機化学:化学品の原料としての二酸化炭素
気候変動生態学:気候に敏感な生態系が特定された
分子進化学:有性生殖は自然選択の効率を高める
再生:アホロートルの肢再生シグナル
植物科学:LURE1を追いかける多数の花粉管受容体
がん:肝疾患と肝臓がんを結び付ける