Nature ハイライト
がんの代謝:細胞外マトリックスから脱落したがん細胞が増殖し続ける仕組み
Nature 532, 7598
がん細胞が自身の代謝プログラムを変更して、三次元のがん細胞塊(スフェロイド)として増殖できるようにするという、これまで知られていなかった機構が今回明らかにされた。細胞外マトリックスから脱落した細胞は、脱落したことによって放出される活性酸素種(ROS)によって増殖が阻害されるのが普通だが、悪性細胞は脱落した状態で生き延びて増殖する能力を獲得することがある。R DeBerardinisたちは、スフェロイド中の細胞がイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)の駆動する還元的グルタミン代謝によって細胞質中でクエン酸を生成させ、それによって酸化ストレスを緩和していることを明らかにした。細胞質中のクエン酸は、次いでミトコンドリアに取り込まれて酸化的代謝回路に入り、NADPHを産生するだけでなく、ミトコンドリアでのROS産生を抑制するのである。
2016年4月14日号の Nature ハイライト
物性物理学:砂時計フェルミオンの展望
再生:アストロサイト瘢痕は軸索の再成長を促進する
再生:組織再生エンハンサーが見つかった
量子物理学:市民の力で量子物理学の問題を解く
地球化学:気候と地形
人類学:先史時代の南米の人口動態史
神経科学:夜の色覚
皮膚がん:加齢ががんのプログレッションに及ぼす影響
がんの代謝:細胞外マトリックスから脱落したがん細胞が増殖し続ける仕組み
がんゲノミクス:がんの活性なプロモーターでの変異率