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古生物学:米国イリノイ州の「タリーモンスター」の新解釈

Nature 532, 7600

今から約3億年前、石炭紀の海を泳いでいたタリーモンスター(復元想像図)。関節のある吻と複数の歯列、棒状突起の先端に付いた眼が特徴的である。
今から約3億年前、石炭紀の海を泳いでいたタリーモンスター(復元想像図)。関節のある吻と複数の歯列、棒状突起の先端に付いた眼が特徴的である。 | 拡大する

Credit: Sean McMahon at Yale University

軟体性の化石動物Tullimonstrum gregariumは、1958年にFrancis Tullyが米国イリノイ州の約3億年前のメゾンクリーク化石鉱床で発見して以来、「タリーモンスター」として広く知られているが、その動物学的な類縁関係は謎に包まれたままだった。その外見は独特で、体は魚類に似ているが、眼は体の両側に突き出た棒状構造の先端にあり、関節のある長い吻の先端に顎がある。その系統発生上の起源については、これまで紐形動物や多毛類の蠕虫、軟体動物、コノドント、さらにはステム群節足動物など、さまざまな分類群との比較解析が行われてきたが、系統的位置付けはいまだに確定していない。今回、2つの研究チームが、Tullimonstrumは確実に脊椎動物であることを示している。T Clementsたちは眼を調べ、脊椎動物の眼との相同性を示す超微細構造の存在を明らかにした。一方、V McCoyたちは、1200点を超える標本を調べて、既知の多くの特徴を解釈し直し、多数の新たな特徴を記載および解釈した。それらの特徴の全ては、Tullimonstrumがヤツメウナギに似た脊椎動物であることと整合し、これによって脊椎動物という分類群の形態的多様性が拡大した。

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