Nature ハイライト
免疫学:微生物たっぷりの「汚れた」マウスの方がより良い免疫学的モデルとなる?
Nature 532, 7600
実験用マウスはin vivo免疫学研究で飛び抜けて多く使われているモデル生物である。だが、マウスモデルでヒトの免疫系がどのくらい正確に再現されているのかについては疑問が投げ掛けられており、特に病気の治療法についての基礎研究の成果を臨床に応用した最近のいくつかの例で期待外れの結果が出たことは、こうした懸念を高めている。今回、実験用マウスの免疫状態を野生マウスやペットとして売られているマウスのそれと比較する研究が行われた。その結果、広く使われている「特定病原体除去(SPF)」マウスの免疫系は、ヒト成人ではなく、ヒト新生児の免疫系に近いことが分かった。実験用マウスを「ペットショップのマウス」と同居させると免疫系の成熟が引き起こされ、免疫系はヒト成人のものにより近くなり、その結果複数の感染モデルでは感染抵抗性が増大する結果となった。このような「微生物で汚れた」マウスを使えば、現在使われているモデルマウスを補って、ヒト疾患へのトランスレーショナル研究の効率を高めたり、前臨床的予防法や治療法の効果についてより良い情報が得られたりする可能性がある。
2016年4月28日号の Nature ハイライト
学習と記憶:次の行動を準備する皮質ネットワーク
海洋微生物学:炭素フラックスに関わる海洋プランクトン
光物理学:不確実になる時間がない
材料:ナノクラック・コーティングで重要な膜の水分を維持する
古生物学:米国イリノイ州の「タリーモンスター」の新解釈
生物海洋学:リザリアが海洋生態学の主役に浮上
免疫学:微生物たっぷりの「汚れた」マウスの方がより良い免疫学的モデルとなる?
遺伝子工学:CRISPR免疫で機能するCpf1酵素