Nature ハイライト
Cover Story:尾にある仕掛け:T4バクテリオファージのゲノム注入機械の構造
Nature 533, 7603
表紙はT4バクテリオファージの尾部基盤の構造を示しているが、これはポリゴン数を減らす「low-poly」の技法を使いマニュアルで作製した画像である。T4バクテリオファージは、収縮性のある尾部を使ってファージゲノムを宿主である細菌細胞に注入する。この過程の中心となるのが、ファージの尾の末端にある尾部基盤である。N TaylorとP Leimanたちは今回、構造生物学の離れ業的手法で研究を行い、T4尾部基盤が宿主細胞へ接着する前と後のコンホメーションの原子モデルを低温電子顕微鏡を使って作製し、これらの2つの状態間の移行をもたらす一連の過程を分子レベルで初めて画像化した。尾部基盤と尾部の管の複合体は15種類のタンパク質に由来する145個のポリペプチド鎖からなり、この構造から尾部基盤が宿主の認識とシース(鞘)収縮を連動させる仕組みが明らかになった。尾部基盤の中心的な構成成分全ての構造と編成は広範囲にわたる細菌収縮装置中で保存されており、このような細菌の尾部基盤は同じような機構を使ってシース収縮を開始していると考えられる。
2016年5月19日号の Nature ハイライト
がんゲノミクス:がん細胞株の再評価
抗生物質:新規マクロライド系抗生物質に向けて
構造生物学:遺伝子転写開始の構造基盤
宇宙物理学:降着を受けている白色矮星連星系
生物地理学:深海の生物多様性を捉える
神経科学:報酬探索行動の選択と調節
再生生物学:サンショウウオの肢の前方–後方シグナル
内分泌学:ニューロテンシンは肥満の要因である
生物工学:二本鎖切断をしないDNA編集
ウイルス学:ジカウイルスが手ごわい理由