Nature ハイライト
Cover Story:知られざる才能:カレドニアガラスと同じく「巧みに道具を使う」ことが明らかになったハワイガラス
Nature 537, 7620
表紙は、棒状の小枝を道具として使って太い枝の中から餌を引き出すハワイガラス。カラス科の鳥類は知能が高いことで有名である。ニューカレドニアに生息するカレドニアガラス(Corvus moneduloides)は、餌を採るために道具を作り、それを使うことがよく知られている。C Rutzたちは今回、こうした習性を持つ鳥はカレドニアガラスだけではないことを明らかにした。太平洋のハワイ諸島に生息する別種のカラスであるハワイガラス(C. hawaiiensis)がその仲間に加わったのである。ハワイ語の名前の「アララー(‘Alalā)」の方でよく知られているこのカラスは、幼鳥期に自然に道具の使い方を覚え、道具を巧みに使う能力はこの種の全体にわたって見られる。著者たちがこのことを確信を持って言えるのは、ハワイガラスは野生ではすでに絶滅しており、今回の実験は全て飼育下にある109羽の生存個体のうちの104羽について行われたからである。今回の研究結果は、熱帯のカラスの技術的熟練は、離島に見られるどちらかというと異例の生態環境、つまり潜んでいる餌を捕食することに対する競争が少ないことや、低い被食リスクなどによって助長された可能性を示唆している。道具を使用する第二のカラス種が発見されたことは、動物での道具の使用に関する比較研究に興味をそそる道を開くことになりそうだ。
2016年9月15日号の Nature ハイライト
神経科学:青斑核による記憶の固定化
構造生物学:クラスA GPCRでのシグナル伝達
エピジェネティクス:長鎖非コードRNAであるXISTのメチル化
地球化学:地球の組成の代理指標としてのコンドライト隕石
地球化学:地球の地殻とマントルの組成はコンドライト的
進化学:アカンソステガ化石の見直し
免疫学:慢性ウイルス感染を抑制するCD8+ T細胞
がん:PGC1αの転移抑制
老化:食餌制限のマウスモデル