Nature ハイライト
ナノ科学:カオスの縁で計算する
Nature 548, 7667
最近、シナプスのようなダイナミクスと適応的な伝導性を示すメモリスターデバイスのグリッドによって、アナログ(非ブール)演算のニューラルネットワーク型の実装が実証された。今回S Kumarたちは、高非線形性二酸化ニオブ・メモリスターデバイスでカオスダイナミクスを利用できる可能性を調べている。このアイデアは、生体ニューロンは「カオスの縁」と呼ばれる領域で機能するという理論から着想を得たものであり、この理論は、ヒトの脳が複雑な情報処理タスクに、非常に効率的に取り組めるという能力のカギであると考えられている。著者たちは、開発したデバイスにおいて制御可能な領域のカオス的自己振動を実証し、典型的な計算困難な問題(巡回セールスマン問題)を解くことのできるメモリスターグリッドを、カオス素子を組み込んでいない手法と比べてより正確に、より高効率でシミュレートしている。単一の電子デバイスに基づくカオス振動子を用いた人工ニューラルネットワークの構築によって、非従来型アナログ演算への興味深い方向性が得られる。
2017年8月17日号の Nature ハイライト
進化学:滑空するジュラ紀の哺乳形類
天文学:赤色超巨星の高速運動するガス
ナノ科学:カオスの縁で計算する
人類学:初期の現生人類がスマトラ島に住んでいた
神経科学:味覚系をいじって苦味と甘味を混乱させる
幹細胞:皮膚は異常増殖を修正することでその形状を維持する
遺伝学:抗がん剤抵抗性を引き起こすlncRNA
細胞生物学:タンパク質分解につながるチャネル
細胞生物学:細胞膜からアクセスできる脂質シグナル伝達受容体