Nature ハイライト
量子物理学:軌道に乗る量子セキュリティー技術
Nature 549, 7670
量子物理の法則から、非常に安全な暗号や量子通信のプロトコルが得られる。しかし、地球規模のネットワークに役立てるには、こうしたプロトコルが衛星を用いて機能するものでなければならない。既存のプロトコルをそうした長距離まで拡張することは、実験的に途方もなく困難である。J Panたちは、今週号の2報の論文で、低軌道衛星Micius(墨子)によって地球規模の量子ネットワークの実現に向けて前進したことを報告している。著者たちは、地上と衛星の間において、量子暗号システムに不可欠な量子鍵配送を1200 kmにわたってキロヘルツレートで実証するとともに、1400 kmにわたる単一光子キュービットの量子テレポーテーションを実証した。量子テレポーテーションは、量子物体の正確な状態を、物体自体を物理的に移動させることなく、ある場所から別の場所へ転送することであり、多くの量子通信プロトコルにおける主要な過程となっている。今回の2つの実験は、Miciusが地球規模の量子インターネットにおける初の構成要素となる可能性を示唆している。
2017年9月7日号の Nature ハイライト
量子物理学:軌道に乗る量子セキュリティー技術
微生物学:微生物はヒトのシグナル伝達を模倣する
分子生物学:抑制されたクロマチンから転写を開始
神経科学:活性型AMPA受容体の構造が初めて解かれた
惑星科学:木星の見事なオーロラ
表面科学:触媒の活性部位を特定する
発生生物学:心臓の非対称性は右から始まる
植物科学:コケにおける性の話
がん:免疫回避の調節
遺伝子調節:CRISPR活性化によるエンハンサー機能のマッピング