Nature ハイライト

がん:HER阻害のバスケット試験

Nature 554, 7691

HER2やHER3[どちらも上皮増殖因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバー]の変異、あるいは過剰発現は、多数のタイプのがんで見られる。今回、全てのHERキナーゼに対する不可逆的な阻害剤であるネラチニブの効果を調べるためのバスケット試験が行われた。バスケット試験とは、腫瘍タイプではなく分子マーカーの存在に基づいて患者に標的治療薬を投与する臨床試験である。HER2とHER3に変異がある異なる21種類の腫瘍(乳がん、肺がん、膀胱がん、大腸がんなど)のうちの1つに罹患した患者141人にネラチニブが投与された。その結果、奏功は変異や組織タイプによって決まり、効果が見られるのはHER2変異がんに限られることが分かった。また臨床効果は、下流シグナル伝達経路の変化にも左右される。今回の結果は、分子に基づく腫瘍学におけるバスケット試験の可能性をはっきりと示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度