Nature ハイライト
がん:HER阻害のバスケット試験
Nature 554, 7691
HER2やHER3[どちらも上皮増殖因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバー]の変異、あるいは過剰発現は、多数のタイプのがんで見られる。今回、全てのHERキナーゼに対する不可逆的な阻害剤であるネラチニブの効果を調べるためのバスケット試験が行われた。バスケット試験とは、腫瘍タイプではなく分子マーカーの存在に基づいて患者に標的治療薬を投与する臨床試験である。HER2とHER3に変異がある異なる21種類の腫瘍(乳がん、肺がん、膀胱がん、大腸がんなど)のうちの1つに罹患した患者141人にネラチニブが投与された。その結果、奏功は変異や組織タイプによって決まり、効果が見られるのはHER2変異がんに限られることが分かった。また臨床効果は、下流シグナル伝達経路の変化にも左右される。今回の結果は、分子に基づく腫瘍学におけるバスケット試験の可能性をはっきりと示している。
2018年2月8日号の Nature ハイライト
進化学:動物の軍拡競走における強さと敏捷さ
がん:HER阻害のバスケット試験
生化学:塩基変化の基盤
構造生物学:2分子のダイニンで移動のペースを設定する
天文学:合体する星からの広角アウトフローが電波で明らかになった
材料科学:木材を処理して強度を高める
気候科学:燃料補助金の廃止がもたらす恩恵は限定的
神経科学:ドーパミンニューロンが次の運動を生み出す仕組み
アルツハイマー病:脳内のアミロイドβ病変を予測する血漿マーカー
免疫学:自然免疫と適応免疫が微生物相を形作る仕組み