Nature ハイライト
生化学:エントロピーは化学的性質に勝る
Nature 563, 7732
ヒトのタンパク質には、無秩序な領域が広く存在している。こうした無秩序な領域の中には、タンパク質同士が相互作用する際の界面として機能するものもある。今回Z Woodたちは、ある酵素の表面に付着している本来的に無秩序な尾部が、この酵素が取り得る多数のコンホメーション状態を、アロステリック阻害因子に高い親和性を持つ状態へと移行させることを明らかにしている。この作用は、完全にエントロピー的な力の働きによるもので、尾部の長さの関数として表され、化学組成によるものではない。このような「エントロピー的調整器」にはアミノ酸配列や構造上の制約がないため、タンパク質のエネルギー状態を微調整するための容易に実現できる適応と考えられ、真核生物のゲノム中に本来的な無秩序性が広く見られる理由はこれで説明できるかもしれない。
2018年11月22日号の Nature ハイライト
遺伝学:最新版ネッタイシマカゲノムアセンブリ
神経変性:TDP-43の集合体は正常な筋再生の際に形成されて除去される
幹細胞:骨を修復する神経堤プログラムの活性化
治療抵抗性:DYNLL1はゲノム安定性と化学療法への応答に影響を及ぼす
量子物理学:読み出し、訂正、繰り返し
オプトエレクトロニクス:有機ラジカル発光体を用いる高効率発光
光学材料:鉛を用いない白色発光
古生物学:恐竜の卵の色と模様
免疫学:T細胞の活性化と増殖におけるBH4の役割
生化学:エントロピーは化学的性質に勝る