Nature ハイライト

合成生物学:合成された恒常性

Nature 570, 7762

ロバストな完全適応(RPA)は生物の恒常性に本来的に備わっている特性であり、プロセス変量が、環境の変動にロバストにあらがって、時とともにひとりでに設定値に達し、それが完璧に維持される過程である。自然界では、RPAには経時的に積分計算を行う負のフィードバックループが関わっていることが多い。今回M Khammashたちは、ゆらぎの多い動態を示す任意の細胞内過程でRPAを獲得するには、どのような制御遺伝子の調節系であっても、特定のネットワークトポロジー[相反積分フィードバック(antithetic integral feedback)]に従わなくてはならないことを数学的に証明した。このフィードバックでは、2種類の分子が互いに相手を消失させる(あるいは化学量論的に不活性化する)ことで、センサーとアクチュエーターを結び付ける。著者たちは、このような相反トポロジーを大腸菌(Escherichia coli)に最小限実装させることにより、人工制御系でRPAを実証し、哺乳類で同様な装置が実現できれば、恒常性維持機能の不全によって生じる臨床症状の自律的細胞治療が可能になるだろうと述べている。

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