Nature ハイライト
大気科学:都市大気において新たな粒子が形成される仕組み
Nature 581, 7807
新たな粒子の生成は、既存の粒子が多数存在しない清浄な環境でしか通常は起こらないと考えられている。しかし、新たな粒子の生成は、北京や上海などの都市の高度に汚染された大気でも頻繁に起こり、都市の大気汚染に大きく寄与していることを示す証拠が増えている。そのため、高濃度の既存のエアロゾルの存在下で、新たに形成された粒子が捕捉されずにどのように成長するかは、説明がついていない。今回N Donahueたちは、CERNのCLOUD(Cosmics Leaving OUtdoor Droplets)チャンバーで行われた測定の結果を用いて、硝酸とアンモニアが凝縮して結合し、粒子上に硝酸アンモニウムを形成することによって、新たに形成された粒子が急速に成長する可能性を示している。硝酸とアンモニアはどちらも都市の大気環境に豊富に存在し、硝酸は、新たな粒子の形成に大きく関与する硫酸より1000倍多く含まれていることが多い。従って、測定されたこの硝酸塩基核生成の成長速度は、硫酸塩基の成長速度よりも1〜2桁速くなる。成長速度が速いため、多くの新たな粒子は、捕捉による損失の影響を受けにくいサイズまで急速に成長できる。しかし、この新たな粒子の形成経路は、おそらく冬季や対流圏上部などの低温条件でしか生じないと考えられる。
2020年5月14日号の Nature ハイライト
天文学:たて座δ型星における脈動モードの同定
量子光学:標準量子限界を超える精度での測定
ナノスケール材料:共有結合2D材料
化学:二酸化炭素電解還元触媒を迅速に見つける
大気科学:都市大気において新たな粒子が形成される仕組み
人類学:アマゾン川流域で栽培されていた初期の作物
神経科学:光が駆動する概日回路は非光駆動性概日回路を調整できる
免疫学:ニューロンによる体液性免疫応答の調節
分子生物学:相分離の複雑性
構造生物学:SARS-CoV-2が受容体に結合する仕組み