Nature ハイライト

生物物理学:相分離した細胞内液体のオートファジー

Nature 591, 7848

オートファジーという過程は、細胞のさまざまな成分の分解に関わっている。具体的には、対象となる積み荷(例えば細胞小器官)は、オートファゴソームという二重膜で囲まれた小胞に取り込まれ、リソソームへと運ばれてそこで分解される。膜を持たない液滴のような、液–液相分離によって生じた細胞質ゾル成分も、オートファジーによって除去されることを示す証拠が得られている。R Knorrたちは今回、この過程の物理的基盤について調べた。得られた実験データと理論的データから、タンパク質を含まない液滴の表面で、液滴の表面張力の働きによってシート状の膜が形成され、それが最終的にオートファゴソーム膜になることが示唆された。この部分的にウェッティング現象を生じたシートの両面は異なる環境にさらされていて、これが、シートがどちら側にわん曲するか、つまり結果的に生じるオートファゴソーム内にどちら側の物質が取り込まれるかを決定する。この研究ではまた、新生したオートファゴソームが液滴全体を隔離する場合と、液滴の一部を隔離する場合の両方があることも分かった。著者たちは、弾性毛細管現象を原動力とするこの過程を、「fluidophagy(液滴のオートファジー)」と命名している。

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