Nature ハイライト
植物科学:TORキナーゼと転写調節
Nature 591, 7849
TOR(target of rapamycin)キナーゼは、あらゆる真核生物で細胞の増殖と成長を調整している。これまでの研究では、主にTORキナーゼによる翻訳調節に焦点が合わせられてきたが、今回Y Xiongたちは、TORが転写に及ぼす影響を調べている。彼らは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において、EIN2(ethylene-insensitive protein 2)がTORの基質であることを発見した。EIN2は小胞体と核の間を行き来するシャトルタンパク質で、植物ホルモンであるエチレンへの応答に関わることが知られている。具体的には、TORは、グルコースの存在下ではEIN2をリン酸化して核への局在を妨げ、これによってグルコース–TOR標的遺伝子の転写に対するEIN2の抑制作用を阻害する。EIN2の転写に対するこの作用は、エチレンシグナル伝達に果たす役割とは独立しているようである。
2021年3月11日号の Nature ハイライト
天体素粒子物理学:宇宙ニュートリノの高エネルギー素粒子物理学
物理学:重力のかけら
計算科学:実時間計算機合成ホログラフィー
地球科学:大地震はどのように破壊するか
古代DNA:100万年前の古代DNA
幹細胞:マクロファージは組織修復中に筋幹細胞を手助けする
植物科学:TORキナーゼと転写調節
SARS-CoV-2:SARS-CoV-2スパイク内の切断部位は病原性に関与する
免疫学:腫瘍微小環境中の制御性T細胞に特異的な代謝チェックポイント
分子生物学:レトロトランスポゾンを制御する
構造生物学:隠されたチャネルを持つ輸送体