Nature ハイライト

進化学:堆積物中の古代DNAから得られた、デニソワ洞窟のヒト族と動物相に関する知見

Nature 595, 7867

デニソワ洞窟の南洞の堆積層断面。
デニソワ洞窟の南洞の堆積層断面。 | 拡大する

Credit: Dr. Richard G. Roberts

ロシアのデニソワ洞窟からはヒト族の遺骸が数多く出土しているが、異なるヒト族集団がこの洞窟に居住した時期と順序、そうした集団の考古学的遺物や環境的背景との関連性についてはあまり分かっていない。今回E Zavalaたちは、デニソワ洞窟の3つの空洞全てにおいて、30万~2万年前の地層断面から堆積物を系統的に採取し、計728点の堆積物試料についてDNA解析を行った結果を報告している。175点の試料からヒト族のミトコンドリアDNA(mtDNA)断片が回収され、この洞窟にはデニソワ人がネアンデルタール人よりも先に居住したこと、そして、この遺跡の歴史全体を通してヒト族集団の入れ替わりが複数回あったことが明らかになった。現生人類のmtDNAは後期旧石器時代の層でしか発見されていない。動物相のmtDNAからは大型哺乳類の入れ替わりも明らかになり、それらが、今回調べられた期間に起こったいくつかの気候変動事象と関連する可能性が示された。

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