Nature ハイライト

構造生物学:サリドマイドの二通りの作用機構

Nature 512, 7512

サリドマイドは緩和な鎮静剤として1957年にヨーロッパで導入され、つわりの治療薬として妊娠した女性に広く使用された。これにより、多発性障害を持つ子どもが何千人も生まれ、この薬は1962年に市場から引き上げられた。その後、サリドマイドとその誘導体は、多発性骨髄腫というがんや、それに関連した疾病である5q-異形成症の効果的な治療薬であることが明らかになってきた。サリドマイドの主要な催奇形性の標的であるセレブロン(CRBN)は、E3ユビキチンリガーゼ複合体CUL4–RBX1–DDB1–CRBN(CRL4CRBN)の一部である。今回N Thomäたちは、DDB1–CRBN E3ユビキチンリガーゼがサリドマイドや、その関連薬であるレナリドマイドやポマリドマイドと結合した状態の結晶構造を示している。その構造から、CRBNのエナンチオ選択的な作用の基盤となる分子機構が明確になった。さらなる構造–機能解析から、これらの薬剤が二通りの機能を持ち、一部の細胞内基質がE3リガーゼに結合するのは阻害するが、それら以外の物質の結合は促進して、それにより細胞内タンパク質の分解を調整することが明らかになった。

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