Nature ハイライト
腫瘍免疫学:CD19標的CAR T細胞療法ではTET2の破壊が抗腫瘍活性を誘発する
Nature 558, 7709
キメラT細胞受容体を用いて遺伝的に改変した患者のT細胞(CAR T細胞)によって抗腫瘍応答を誘導できるが、患者の体内でそうしたCAR T細胞が増殖したり存続したりする能力にばらつきがあるため、応答は一定ではない。今回、CD19 CAR T細胞で治療を受け、完全寛解に至った1人の慢性リンパ性白血病患者の症例が報告された。予想外なことに、増殖していたCAR T細胞は単一のクローン由来で、このクローンではCAR導入遺伝子の挿入により内在性のTET2遺伝子が破壊されていた。さらに、その患者では、もう片方のTET2対立遺伝子にハイポモルフ変異があることが分かった。結果として生じたメチルシトシンジオキシゲナーゼであるTET2の不活性化が、エピジェネティックな変化を誘導し、それによってT細胞の分化と機能が変化して、セントラル記憶の表現型が促進され、抗腫瘍効果が増強することが分かった。この知見は、TET2シグナル伝達の調節によって、CAR T細胞の効果を改良できる可能性があることを示唆している。
2018年6月14日号の Nature ハイライト
微生物生態学:ヨーロッパの外生菌根菌多様性の駆動要因を明らかにする
生化学:ヒトリボソームサブユニットの集合過程を可視化
構造生物学:LRRC8Aの構造
量子物理学:決定論的な量子エンタングルメント
量子物理学:効率の高い量子リンク
古生物学:小惑星衝突地点での生命の急速な回復
神経科学:記憶エングラムには安定なものと動的なものがある
心血管疾患:酸化型LDLの阻害はアテローム性動脈硬化を防ぐ
腫瘍免疫学:CD19標的CAR T細胞療法ではTET2の破壊が抗腫瘍活性を誘発する
生物物理学:酵素の進化機構としての動的アロステリー