Nature ハイライト
惑星科学:非効率的だった月の集積
Nature 571, 7764
月の集積の歴史の本質は、地球が月に比べて不釣り合いなほど多くの強親鉄元素を集積したことから、依然として謎である。しかし、月は各衝突天体の質量の大部分を保持したとされることが多い。今回M Zhuたちは、一連の衝突シミュレーションを実行し、月の歴史を通して地殻とマントルに集積された質量を定量化している。その結果、月に保持された衝突天体の質量の平均割合が、これまでの見積もりの約3分の1であることが見いだされた。これは、月の地殻とマントルの強親鉄元素の収支を一致させるには、強親鉄元素の保持が約43億5000万年前(月のマグマオーシャンの大半が固化した時期)に始まったはずであることを示している。衝突天体の保持比が低いことと月のマントルへの強親鉄元素の保持が遅い時期であったことを組み合わせると、地球と比較して月の後期の集積質量が見かけの上で少ないことの現実的な説明が得られる。
2019年7月11日号の Nature ハイライト
神経科学:老化した脳では炎症が幹細胞機能に影響を及ぼす
免疫学:CD8 T細胞疲弊の調節
遺伝子工学:免疫過程に助けられてジャンプする遺伝子
惑星科学:非効率的だった月の集積
量子物理学:単一の核スピンの検出
物性物理学:磁気単極子の動きを検出する
エネルギー科学:プレーナー型ペロブスカイト太陽電池の安定性の向上
生化学:タンパク質–無機ハイブリッド材料
生体力学:足の胼胝が歩行に役立つ理由
細胞生物学:Smoothenedを介するシグナル伝達