Nature ハイライト
Cover Story:がんの解剖:転移の初期段階における細胞環境の変化を明らかにする蛍光標識
Nature 572, 7771
がん細胞は、原発部位から体内の別の場所へと移動する際、すぐそばにある正常細胞に、腫瘍の形成を促進する環境、つまり転移ニッチを作らせることができる。これまで、がんが広がる初期段階の転移ニッチで起こる細胞過程の特定は困難であった。今回I Malanchiたちは、転移ニッチの構成を調べることができる手法を提示している。彼らは、隣接細胞に取り込まれる細胞膜透過性蛍光タンパク質を開発した。そして、がん細胞を遺伝子操作してこのタンパク質を発現させることで、転移初期の転移ニッチにおける正常細胞の特性を調べることが可能になった。転移ニッチの経時的な分析から、がん性の細胞の周囲の細胞組成の変化の概要が得られた。表紙は、今回の結果を描いたイラストで、転移性乳がん細胞(黄色)が、転移ニッチの隣接する正常細胞(赤色)に蛍光タンパク質を渡している様子が、他の組織細胞(白色)と区別して描かれている。
2019年8月29日号の Nature ハイライト
エレクトロニクス:カーボンナノチューブのマイクロプロセッサー
生化学:ずっと未発見だったミトコンドリアのATP感受性K+チャネルが確認された
代謝:褐色脂肪組織を介した熱産生は分岐鎖アミノ酸の取り込みに依存する
物性物理学:ニッケル酸化物超伝導体
ナノスケール材料:単一分子を通る熱流の測定
ナノスケール材料:最大限のドーピング
進化学:哺乳類では代謝率と体温は進化的には相関していない
再生生物学:プラナリアの分裂を介した再生の制御
微生物学:体の中で作られるプロバイオティクス
関節炎:関節で保護バリアを形成するマクロファージ
分子生物学:CTCFパラログであるBORISのがんでの働き