Nature ハイライト
化学:酵素を用いる合成化学
Nature 586, 7827
酵素は生命維持のために無数の化学反応を触媒しており、合成化学の分野では100年以上前から、こうした複雑さに匹敵する反応をフラスコ内で見つける試みが行われてきた。自然界にとって新規の反応はいまだに発見され続けており、今回Y Tangたちは、実験室では1940年代から行われてきたアルダー-エン反応が生物系にも存在することを発見・報告している。アルダー-エン反応では、二重結合の位置の移動が起こる。この反応はペリシクラーゼ(ペリ環状反応を触媒する酵素群)によって触媒されるが、ペリシクラーゼにはもう1つ、最近発見されたヘテロ・ディールス・アルダー反応(酸素を含む環を形成する)を触媒する酵素群もある。計算機解析によって、これらの2つの反応を切り替える方法が明らかになった。我々は生物から新しい技を学ぶことが多いが、生物より先に技を習得することもあるようだ。
2020年10月1日号の Nature ハイライト
ナノスケール材料:単層グラフェンを用いたマイクロ波検出器
化学:酵素を用いる合成化学
気候科学:グリーンランド氷床からの質量損失は間もなく過去1万2000年で最大に
神経科学:解離状態の神経リズム
幹細胞:単一細胞レベルでの細胞の再プログラム化
微生物学:微生物相を介した腸の修復
コロナウイルス:SARS-CoV-2薬の大規模スクリーニング
免疫学:ヒトにおけるインフルエンザワクチン接種に対する胚中心B細胞応答
創薬:抗生物質の全合成
構造生物学:de novoなDNAメチル化