Nature ハイライト
神経科学:解離状態の神経リズム
Nature 586, 7827
解離とは、知覚体験が中断して情動的な反応から分離してしまう行動変容状態である。解離は、心的外傷やてんかんに伴うことがあり、幻覚剤の影響下で発生することもある。今回K Deisserothたちは、マウスで、ケタミンやフェンシクリジンの投与によってヒトの行動解離に似た状態が誘発されることを示し、その神経生理的基盤を調べている。その結果、解離に似た状態は、脳梁膨大後部皮質の第5層ニューロンにおける低周波の律動活動と関連しており、こうした律動によって誘起され得ることが明らかになった。また、脳梁膨大後部皮質の律動と他脳領域との共役には特定のパターンがあることも分かった。1人のてんかん患者では、発作前後の自己申告による解離のタイミングに同様の律動が見られ、右または左の深部後内側皮質を短く電気刺激すると解離体験が引き起こされた。これらの結果は、解離状態の基盤にある皮質の律動活動の分子的、細胞学的、生理学的な特性を明らかにするものである。
2020年10月1日号の Nature ハイライト
ナノスケール材料:単層グラフェンを用いたマイクロ波検出器
化学:酵素を用いる合成化学
気候科学:グリーンランド氷床からの質量損失は間もなく過去1万2000年で最大に
神経科学:解離状態の神経リズム
幹細胞:単一細胞レベルでの細胞の再プログラム化
微生物学:微生物相を介した腸の修復
コロナウイルス:SARS-CoV-2薬の大規模スクリーニング
免疫学:ヒトにおけるインフルエンザワクチン接種に対する胚中心B細胞応答
創薬:抗生物質の全合成
構造生物学:de novoなDNAメチル化