Nature ハイライト
物性物理学:電子に引きずられる光子
Nature 594, 7864
1850年、イッポリート・フィゾーは、移動する水の中を光が伝播する際には光の速度が変化し得ること、すなわち光が媒体に引きずられることを実証した。このドラッギング効果は予想より小さかったが、後にアルベルト・アインシュタインの特殊相対性理論を用いて理解が可能になった。今回D BasovたちとF Wangたちは、固体中の電子流による光子のドラッギングについて報告している。具体的には、彼らは共に、グラフェンにおいて表面プラズモンポラリトン(すなわち光子と電子の複合準粒子)のドラッギングを報告している。この効果は、ドップラーシフトしたプラズモン波長を測定することで実証された。電流を用いて今回実現されたプラズモンの制御は、プラズモンの非平衡現象や非相反現象を調べる新たな機会を開く。
2021年6月24日号の Nature ハイライト
量子物理学:最大規模の量子チップを用いた量子シミュレーション
物性物理学:電子に引きずられる光子
材料科学:動作中の電池を詳しく調べる
化学:分子ポンプ
発生生物学:毛包発生の「テレスコープ」モデル
コロナウイルス:多量体フェリチンナノ粒子ベースの汎ベータコロナウイルスワクチンの候補の開発
心血管疾患:MARK4は微小管の脱チロシン化を変化させて虚血性心不全を調節する
がん:肝臓に常在するナチュラルキラー細胞はがん細胞の休眠を維持する
分子生物学:Spo11によるDNAギャップの形成
構造生物学:神経伝達物質がその受容体を介してシグナルを伝える仕組み
構造生物学:グルタミン酸シグナル伝達の複雑さ