Nature ハイライト
ゲノミクス:タリム盆地のミイラの意外な起源
Nature 599, 7884
シルクロードの一部である中国の新疆ウイグル自治区は、ユーラシアをまたぐ交易の重要な拠点であった。新疆南部のタリム盆地からは、西洋風の衣服を身にまとい、青い眼や金髪などの表現型の特徴を持つミイラ化したヒト遺骸が発見されており、その起源については議論が交わされ、さまざまな仮説が立てられている。今回C Jeongたちは、タリム盆地の紀元前2100~1700年頃の個体および新疆北部のジュンガル盆地の紀元前3000~2800年頃の個体に由来する古代DNAを解析している。その結果、ジュンガル盆地の個体のDNAは大部分がアファナシェヴォ人系統に由来していた一方、タリム盆地の個体のDNAには同地域の系統しか見られないことが分かった。こうしたデータに基づいて、タリム盆地の人々が、アルタイ/サヤン山脈のアファナシェヴォ集団を祖先とするという「ステップ仮説」と、バクトリア・マルギアナ考古学複合の移動性農耕民を祖先とするという「オアシス仮説」の両方が否定された。著者たちはこれとは対照的に、タリム盆地のミイラがこの地域において遺伝的に隔離された集団から生じた集団に属していたと結論付けている。
2021年11月11日号の Nature ハイライト
物性物理学:超伝導カゴメ物質における電荷秩序
化学:工業用プロパン脱水素化向けの単純かつスケーラブルな触媒の作製
気候科学:最終氷期極大期以降の全球表面温度の再構築
進化学:転がる苔虫は化石を生ぜず?
ゲノミクス:タリム盆地のミイラの意外な起源
植物科学:根の成長のための複雑なオーキシンシグナル伝達
コロナウイルス:COVID-19におけるウイルス誘導性老化
腫瘍生物学:カロリー制限は脂質代謝の脱調節を介して腫瘍増殖を減少させる
細胞生物学:Nf1タンパク質の構造
構造生物学:カイニン酸受容体での神経伝達の調節