Nature ハイライト
腫瘍生物学:カロリー制限は脂質代謝の脱調節を介して腫瘍増殖を減少させる
Nature 599, 7884
がん細胞では代謝要求が変化しているため、現在いくつかの臨床試験で、患者ケアの補助としての食餌介入が調べられている。そうした食餌介入の中でも、カロリー制限(CR)とケトン食(KD)という2種類の低血糖食が最も注目を集めており、それは、これらがどちらもグルコースレベルとインスリンレベルを低下させ、複数の動物モデルで腫瘍増殖を遅らせることができるからである。今回M Heidenたちは、膵臓がんマウスモデルで両方の食餌の効果について調べ、血糖が関係しない1つの機構を発見した。CRは全身や腫瘍で脂質レベルを低下させて腫瘍増殖を抑制するが、KDではそれが起こらないことが分かった。機構としては、CRは代謝酵素であるステアロイルCoAデサチュラーゼ(SCD)の活性を低下させて、これががん細胞の低脂質環境への適応を阻害し、腫瘍内の不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸のバランスを乱す。対照的に、KDでは脂肪含有量が高いため、脂質利用可能性が増加し、腫瘍内での飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の割合が維持される。
2021年11月11日号の Nature ハイライト
物性物理学:超伝導カゴメ物質における電荷秩序
化学:工業用プロパン脱水素化向けの単純かつスケーラブルな触媒の作製
気候科学:最終氷期極大期以降の全球表面温度の再構築
進化学:転がる苔虫は化石を生ぜず?
ゲノミクス:タリム盆地のミイラの意外な起源
植物科学:根の成長のための複雑なオーキシンシグナル伝達
コロナウイルス:COVID-19におけるウイルス誘導性老化
腫瘍生物学:カロリー制限は脂質代謝の脱調節を介して腫瘍増殖を減少させる
細胞生物学:Nf1タンパク質の構造
構造生物学:カイニン酸受容体での神経伝達の調節