Nature ハイライト 生理:抗うつ薬で寿命が延びる 2007年11月22日 Nature 450, 7169 線虫(Caenorhabditis elegans)の寿命を延長させる化学物質を探索する大規模なスクリーニングから、意外な結果が得られた。ヒトで抗うつ薬として用いられている化合物ミアンセリンが、3週間という線虫の寿命をほぼ3分の1延長させるのである。ヒトの場合には、この薬物は神経伝達物質セロトニンによる神経シグナル伝達を遮断するが、線虫に対する寿命延長効果にも、セロトニン受容体が関与しており、食事制限による寿命延長の基盤と似た機序がかかわっていることが明らかになった。1つの可能性として、ミアンセリンが、実際の飢餓ではないが、飢餓と感じられる状態を誘導することが考えられる。食欲刺激はヒトでのミアンセリンの副作用であることから、食欲と寿命の間に関連がある可能性が高くなってきた。 2007年11月22日号の Nature ハイライト 宇宙:大気の主要成分が炭素の白色矮星 心理:赤ちゃんにも人を見る目がある 生理:抗うつ薬で寿命が延びる 嗅覚:におわなければ怖くない 物性:フェルミ面にできたポケット 環境:茶色の水 環境:海の二酸化炭素 微生物:シロアリが木材を消化する仕組み 細胞:光を熱に変えて身を守る 目次へ戻る