Nature ハイライト 医学:ダウン症候群が癌予防の道標に 2008年1月3日 Nature 451, 7174 一部の疫学研究は、ダウン症候群の患者(第21染色体を3本もち、21トリソミーとして知られる)では固形腫瘍の発生率が低いことを示唆しているが、こうした知見が確認できないことも報告されている。これらの相反する知見の謎が、ダウン症候群のマウスモデルで約100個の遺伝子がトリソミーとなっているTs65Dnを用いた実験によって解明できたようだ。ヒト第21染色体の遺伝子群に相当するマウスの遺伝子群が、トリソミーつまり3コピーある場合には、腸腫瘍の一部の発生率が低下するが、同じ遺伝子群が1コピーだけ(モノソミー)の場合には、腫瘍の数が増加することが明らかになったのである。この遺伝子量依存的な作用は、転写因子Ets2に起因すると考えられる。したがって、これまで癌遺伝子として知られてきたEts2は、腫瘍抑制因子としても働いており、癌を予防する薬物の標的となりそうだ。 2008年1月3日号の Nature ハイライト 生理:昆虫の浮気を防止する受容体 宇宙:ついに見つかった若い太陽系外惑星 材料:ナノクラスター構造体 気候:秋の温暖化 気候:上に行くほど暖かい 地球:誘発地震が遅れて起こる理由 医学:ダウン症候群が癌予防の道標に 細胞:NUMBの抗癌作用 工学:さらによいバイオ燃料を求めて 目次へ戻る