Nature ハイライト

医学:ダウン症候群が癌予防の道標に

Nature 451, 7174

一部の疫学研究は、ダウン症候群の患者(第21染色体を3本もち、21トリソミーとして知られる)では固形腫瘍の発生率が低いことを示唆しているが、こうした知見が確認できないことも報告されている。これらの相反する知見の謎が、ダウン症候群のマウスモデルで約100個の遺伝子がトリソミーとなっているTs65Dnを用いた実験によって解明できたようだ。ヒト第21染色体の遺伝子群に相当するマウスの遺伝子群が、トリソミーつまり3コピーある場合には、腸腫瘍の一部の発生率が低下するが、同じ遺伝子群が1コピーだけ(モノソミー)の場合には、腫瘍の数が増加することが明らかになったのである。この遺伝子量依存的な作用は、転写因子Ets2に起因すると考えられる。したがって、これまで癌遺伝子として知られてきたEts2は、腫瘍抑制因子としても働いており、癌を予防する薬物の標的となりそうだ。

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