Nature ハイライト

遺伝:ヒトの移動を物語る遺伝子

Nature 451, 7181

ヒト集団での遺伝的差異のゲノム全域にわたるパターンの解析からは、世界全体にわたるヒトの移動と適応のパターンに関する遺伝学的証拠を得ることができると考えられる。今週号の2つの対照的な論文は、こうした解析方法の威力をはっきりと示したものだ。Lohmuellerたちは多数のデータセットを組み合わせ、15人のアフリカ系アメリカ人と20人のヨーロッパ系アメリカ人の11,000個の遺伝子の塩基配列を再度解読し、各々が保有する有害変異の数を詳細に見積もった。その結果、ヨーロッパ系の個体ではアフリカ系の個体に比べて、有害となりうる変異がゲノムの中により多く潜んでいることが明らかになった。これは、ヨーロッパへの移住に伴った「出アフリカ」ボトルネック効果に起因する遺伝的遺産だと考えられる(Letter p.994, www.nature.com/podcast)。Jakobssonたちは、ヒトゲノム多様性解析プロジェクト中の29集団を調べることにより、ヒトの遺伝的差異のスナップショットをさらに広範囲にわたってとらえた。彼らはヒトゲノムの50万を超えるマーカーの遺伝子型データを手に入れた。これらのデータによって、アフリカからの地理的距離が増すにつれて連鎖不平衡も増加することが明らかになり、Lohmuellerたちのアフリカ系およびヨーロッパ系アメリカ人に関する研究と同じような結果が得られた(Letter p.998)。

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