Nature ハイライト

Cover Story:翻訳中のmRNA:1個のリボソームによるコドンごとの翻訳を追跡

Nature 452, 7187

最近の結晶学と低温電子顕微鏡法の進歩により、タンパク質合成、すなわちメッセンジャーRNAにコードされた遺伝情報をポリペプチド鎖へと翻訳する作業についての解明が一層進んだ。今回、J-D Wenたちは光ピンセットを巧みに使って、大腸菌のリボソームが1本のmRNAの翻訳を1回にコドン1個ずつ進めていくのを追跡した。1本のmRNA(表紙画像では黄色)がほどけて翻訳されていく様子が捉えられている。翻訳は連続的に行われるのではなく、移動-停止のサイクルを繰り返す、断続的な過程であることがわかった。各サイクルは、0.1秒足らずで行われるヌクレオチド3個分の移動と、それに続く数秒間の停止から成り立っている。翻訳の際にmRNAに沿ってリボソーム装置が物理的に動いていく様子が、今回初めてリアルタイムで観察された。今回の単一分子での観察によって、翻訳にかかわる問題の中で、まとまった量を扱う従来の方法では解決できなかった遺伝子翻訳の調節や忠実度といった問題に取り組めるようになるだろう(Article p.598)。画像はL LancasterとC Hodgesによる。作成には、分子グラフィクス・ソフトRIBBONS(M Carson, 1997)を使用。

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