Nature ハイライト

細胞:培養系で疾患を模倣

Nature 457, 7227

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、小児の最も一般的な致命的神経疾患の1つで、2コピーあるSMN1遺伝子の両方に変異が生じた場合に起こる。SMAの発症機序はほとんど明らかになっていないが、その一因は、SMN1SMN2の2種類の遺伝子が存在するのはヒトだけで、げっ歯類などの実験モデル候補動物にはSMN遺伝子が1種類しか存在しないことである。今回、細胞レベルでSMA疾患の病因を調べるための新しい手段が開発された。SMA患者である子どもの皮膚繊維芽細胞と、この病気にかかっていないその母親の皮膚繊維芽細胞(比較に用いるため)から、誘導多能性幹(iPS)細胞株が作られたのである。この細胞から培養神経前駆細胞が形成され、これからは疾患の表現型を維持した分化神経組織と運動ニューロンを作り出すことができる。培養細胞は、SMAに関連する変異型タンパク質を増加させることが知られている薬剤にも応答した。同様のiPS技術は、ハンチントン病などのほかの遺伝性疾患の研究でも貴重なものとなるかもしれない。

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