Nature ハイライト 植物科学:効率よく成長する植物 2009年1月15日 Nature 457, 7227 倍数性、すなわち全ゲノム重複は、植物に広くみられる進化的革新の1つである。コムギ、ワタ、アブラナなどの一部の主要作物は異質倍数体で2種類以上の異なったゲノムをもち、また植物の中には、種内雑種、種間雑種として存在するものもある。このような植物は、非常に勢いよく成長することがある。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)と近縁のA. arenosaとの間に生じた雑種の研究によって、このような成長力増強の基盤となる機構の手がかりが得られた。概日時計の調節因子のエピジェネティックな修飾が、異質倍数体の光合成経路およびデンプン代謝経路の遺伝子の発現を引き起こすことが明らかになったのである。その結果、このような雑種ではクロロフィルの含有量やデンプンの生産量が増え、どちらの親よりも大きくなる。つまり、雑種植物や異質倍数体植物は、概日時計調節因子を可逆的に調整することにより、生理的また代謝的経路の制御を行って昼間の時間を有効活用し、そこから利益を得ているらしい。 2009年1月15日号の Nature ハイライト 細胞:培養系で疾患を模倣 生理:視覚のもう1つの側面 宇宙:「青色はぐれ星」の起源 物理:ポラリトン凝縮体 進化:魚類の進化史に誤り? 細胞:概日周期で働く合成回路 脳:体験から学ぶ 細胞:昆虫にも足細胞に似た細胞がある 植物科学:効率よく成長する植物 目次へ戻る