Nature ハイライト 脳:体験から学ぶ 2009年1月15日 Nature 457, 7227 ある出来事に遭遇した場合の脳の適応能力が、以前に似た体験をしているとよくなることは誰もが知っているが、最初の体験が神経回路の中でどのように表現されるのか、またそれが再学習にどう寄与するのかは、よくわかっていない。マウスの一方の眼を一時的に閉じるというモデルは、こうした問題を研究できる系の1つである。新しい体験(片眼視)は、視覚皮質にある神経細胞の樹状突起棘の成長を促す。Hoferたちは、片眼視と両眼視の時期を交互に導入して、その後の神経細胞の形態を数日間追跡し、体験によって起こる構造的変化動態を記録した。その結果、長く持続する樹状突起棘の密度が片眼遮断に応答して増加し、体験終了後も突起棘は増えたままになることがわかった。しかし、2回目の遮断では、さらなる棘密度増加が引き起こされなかった。したがって、最初の体験が構造に「痕跡」を残し、それがさらなる刺激に応じて使われると考えられる。 2009年1月15日号の Nature ハイライト 細胞:培養系で疾患を模倣 生理:視覚のもう1つの側面 宇宙:「青色はぐれ星」の起源 物理:ポラリトン凝縮体 進化:魚類の進化史に誤り? 細胞:概日周期で働く合成回路 脳:体験から学ぶ 細胞:昆虫にも足細胞に似た細胞がある 植物科学:効率よく成長する植物 目次へ戻る