Nature ハイライト 細胞:がん幹細胞の自己複製 2009年1月1日 Nature 457, 7225 哺乳類の造血幹細胞は、その一生の間に行う複製の回数がおよそ80〜200回くらいに限られているのに対し、白血病幹細胞は、ほとんど無限の自己複製能を維持しているようにみえる。この大きな違いがどこから生じるのかを解明する手がかりが得られた。白血病幹細胞の自己複製に、細胞周期阻害因子であるp21が必要であることが発見されたのである。PML-RARがん遺伝子は、急性前骨髄球性白血病の患者のほとんどで活性化されている。マウスモデルを使った実験で、造血幹細胞でのPML-RARの発現がp21の発現レベルを上昇させ、それが細胞周期の停止やDNA修復につながることが示された。このことにより、静止期の白血病幹細胞のプールが維持されて、過剰な増殖による枯渇が防がれる。p21が存在しないと、白血病関連がん遺伝子による白血病誘発開始や維持が起こらなくなる。この研究は、p21が、静止期のがん幹細胞の根絶に基づく抗がん治療の標的候補であることを明らかにしたものだ。 2009年1月1日号の Nature ハイライト 細胞:がん幹細胞の自己複製 細胞:DNA二本鎖切断の新しい修復経路 宇宙:星形成での自己重力 量子情報科学:限界までスクイーズする 行動進化学:いい人であることの御利益 視覚:画像を作り上げる 免疫:エイズワクチンの見直し 細胞:骨髄のニッチ 細胞:バーシカンが転移を進める 目次へ戻る