Nature ハイライト 進化:恐竜の手の内 2009年6月18日 Nature 459, 7249 恐竜が現在も「鳥類として」生き続けているという考え方は、広く受け入れられている。しかし、やっかいな問題が1つある。鳥類の手(前肢末端部で、現在では指の数が減って翼の一部となっている)は、祖先の手の5本指のうち第II指、第III指、第IV指に由来すると考えられている(親指を第I指とする)。しかし、鳥類に最も近い獣脚類恐竜の手の3本指は、第I指、第II指、第III指に由来するようにみえる。手はどのようにして形を変えたのだろうか。恐竜研究で多くの成果を挙げてきたX Xuたちは、中国西部のジュンガル盆地のジュラ紀地層から原始的な小型の草食性獣脚類を発見したことにより、この問題を解決したようである。この約1億5,500万年前の恐竜は、第I指が短くて小さく、第II指、第III指、第IV指がよく発達している。その手根骨は、第II-III-IV指に対応する手根骨に似ているが、指の骨自体はむしろ第I-II-III指の場合に近い。このことは、恐竜の手から翼への進化の中で手首および指の発生に複雑な変化があったことを示唆しており、今回新たに発見された恐竜はこうした変化のひとコマを現在に伝える証拠と考えられる。 2009年6月18日号の Nature ハイライト 進化:恐竜の手の内 医学:マラリア原虫のタンパク質輸送装置 細胞:リステリアの二重生活 宇宙:潮汐作用で生じるイオの火山活動 物理:ナノ機械振動 気候:季節の調整 進化:皆それぞれが個体 遺伝:神経芽細胞腫でみられるコピー数多型 植物:ヒナゲシの自己認識 目次へ戻る