Nature ハイライト 細胞:酵母のスピードデート 2010年5月6日 Nature 465, 7294 出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeが接合するときには、相手となる酵母、すなわち性フェロモンを大量に発現している酵母が近くにいることをまず検知しなくてはならない。このフェロモン感知機構にはMAPキナーゼシグナル伝達カスケードがかかわっており、フェロモンを最も大量に分泌している酵母が相手として選ばれる。実験と数値モデリングとを組み合わせた研究で、接合の決定は「全か無か」方式、すなわちスイッチの切り替えのような応答であることが明らかになった。つまり、接合が開始されるには、その酵母細胞周辺のフェロモン濃度が限界濃度に達している必要があり、そのレベルに達していない場合には、酵母は無性生殖を続ける。接合の決定は迅速で、フェロモンに出会ってから2分以内に行われる。足場タンパク質Ste5は、活性状態にある複合体中のMAPKカスケードの成分に結合する、フェロモンの作用の直接の制御因子である。哺乳類のシグナル伝達系でも同じような超高感度の機構が働いているとすれば、病気を引き起こすような変異に敏感である可能性があり、治療の重要な標的になるかもしれない。 2010年5月6日号の Nature ハイライト 脳:神経コーディング 宇宙:銀河の外側について考える 組織工学:筋肉を模倣する 地球:地球の核の磁場強度 細胞:mtDNAの交換 生理:水の味の分子基盤 医学:C型肝炎の新しい治療薬 細胞:酵母のスピードデート 構造生物学:暗所で緑化を起こす物質 目次へ戻る